データインテグリティ(データの完全性)を証明することは、記録やデータに対する信頼性を確保するために欠かせないポイントです。
データインテグリティ(DI)が考慮されていない書類や資料は根本的に記録や参照として使えないため、必ず紙媒体でもデータインテグリティへの対応を意識しておきましょう。
データインテグリティのガイダンスではALCOA原則が採用されていますので、順守した上での紙ベースの作成が必要です。
手書きの署名に押印、日付、記録した時刻の記入が必要。押印に印鑑を使うと運用管理強化を指導される可能性があるので対策を行う必要があります。また、時刻については、GMP区域の時間に合わせなければいけません。
恒久性のある不滅インクの使用し、書き換えが容易な鉛筆、消しゴムや修正液は使用禁止です。間違えてしまった場合は、一本線で取り消し、名前・日付・変更理由を記載します。
ページ管理では、ページ毎に番号をつけてページ抜けや飛んでしまうことがないようにし、連番を記載したブランク記録用紙を発行して、間違いがないように徹底します。
完成したら、記録の作成・照査・承認に関与しない人の中から保管担当者を決めて、管理体制の整っている文書保管庫へ保管します。
正式な書式に確実に記録できるように、手順書・教育・レビュー・監査・自己点検を行います。GMP区域と同期している時計などを使って日時を記録し、可能であれば秤量などの手動操作の日時も自動化しておきます。
安全な保管庫などで管理し、記録の目録からすぐに取り出せるようにしておきます。オリジナル紙記録をマイクロフィルムなどに保存する場合は、適切な読み取り機を使います。
分析法バリデーションや製造工程のバリデーション、GXPデータのレビュー、逸脱・疑義が考えられる結果や規格外の結果に対する調査など、正確性を保証するための管理が求められています。
紙媒体であれ電子媒体であれ、データが誰にでも修正されたり改ざんされたりすれば、そもそも記録としての体を成しません。そのため、データインテグリティの要件を満たす上で、記録文書が適正かつ厳重に保管されていることは大前提の条件です。
また、保管されている文書そのものについても、帰属性や正確性、原本性といった要件を満たせるように、作成ルールと管理体制を設定しておくようにします。
その記録を誰が作成したのか示すことは、データインテグリティの要件の1つである「帰属性」に欠かせないポイントです。
記録者を特定する場合、単に誰が記録したのか署名するだけでなく、いつ、どこで、何を記録したのかといった情報も併記します。なお、修正や消去が簡単に行えないよう記入法や筆記用具を考えることも大切です。
修正する際は、修正した人を記録するだけでなく修正前の内容も残しておきます。
製造や作業の際に正しい手順やルールを遵守できるよう、あらかじめ照査についてフローを明確化しておくことも欠かせません。また、照査・承認は業務の正確性や有効性についてチェックする重要な過程だからこそ、誰がどのように照査するのか責任者や権限者を限定しておくことも必要です。
なお、一連の業務や照査・承認の流れはマニュアルとしてまとめた上で、各部署や現場の全員で共有しておきましょう。
真正コピーとは、書類の原本と同じ価値を認められるコピーのことであり、基本的には原本書類と同様に扱われます。データインテグリティでは原本性が重視されますが、管理上のリスクを考える上で真正コピーを用意しておくことも重要です。
真正コピーは作成手順が厳格にルール化されていることが前提であり、真正コピーを作るために使用した記録やデータが流用されないよう対策しておきましょう。
データを紙ベースで管理する際、記録用紙や書類として使用する紙そのものにも適正なマネジメントが必要です。具体的には、単なるノートの切れ端やメモ、付箋、また相互に区別できないコピー用紙などを記録用紙として利用することは認められません。
管理番号や通し番号が記載されていたり、きちんとしたマークが印字されていたりと、バージョン管理や発行管理が適切に行われている規定の用紙を記録用紙として利用する体制を構築しておきましょう。
紙ベースでデータ管理を行う場合、データが発生する作業を行った後すぐに作業を担当した本人がデータを記入して記録することも重要です。
複数の作業後にまとめてデータを記入しようとした場合、いざデータを書き込もうとした際にそれぞれのデータや数値を混同してしまうリスクや、データを忘れてしまうリスクが生じます。
データは時間を置いたり別の作業を挟んだりすることなく、正確な内容を作業と同時に記録しておきましょう。また、記録者が分かるようにサインを入れることも必要です。
もしも誤った数値やデータを記入してしまった場合、訂正や取り消しをどうするのか事前に明文化しておくことも大切です。
単に消しゴムで消して書き換えてしまうと、本当にそのデータが正しいのか信頼できなくなります。そのため、記録を訂正する際は最初の数字を残したまま、訂正箇所に1本線を引いたうえで修正理由や修正した人物の署名、修正日を記載するといった取り組みが必要です。
また、訂正を行える権限を設定して、そもそも訂正できる人物を限定するといった方法もあります。
紙ベースでGMP運用(製造管理及び品質管理)をおこなう場合には、細かい内容確認が必要です。変更や修正がしやすい鉛筆書きや修正液の使用などは査察時に細かく指摘されるので特に注意します。これは世界の主要国や機関から発出されているガイダンスなどを参考に作成します。
データインテグリティへのガイダンス例としては、以下のようなやり方があります。ちなみに、記入時には不滅インクを使用します。
データインテグリティについては米国FDAや英国MHRAといった機関から公的なガイダンス・基準が設定されており、データインテグリティの確保にはそのようなガイダンスを遵守することが重要となります。一方、紙媒体は記録の改ざんや記入ミスといったことが起こりやすく、過去の記録を参照する際にも手間がかかります。
事実、厚生労働省が加盟する「医薬品査察協定・医薬品査察協同スキーム(PIC/S)」のGMP運用ガイダンスでも紙媒体のデータインテグリティ対応は難しいとされており、適切なシステムを導入して電子化・自動化を進めることが合理的な解決策といえるでしょう。
当サイトでは、データインテグリティ対応を実現するための最適解として、システム導入による電子化・自動化のポイントを特集しています。合わせてぜひご覧ください。