GMPは、医薬品を製造する際に守るべき製造管理や品質管理の基準であり、安全かつ健全な医薬品を恒常的に製造するためにはGMPを遵守している必要があります。このページでは、GMPについて要件や関連法案などを解説していますので参考にしてください。
GMP(Good Manufacturing Practice)とは、安全かつ適正な医薬品の製造環境を実現するために守るべき要件の総称であり、日本国内では「医薬品の製造管理及び品質管理の基準」といった形で表現されます。
使用者の健康や生命へ直接に影響を及ぼす医薬品は、製造段階から厳格な管理基準によってコントロールされていなければならず、守るべき基準や要件も法令によって定められていることがポイントです。
そのため、医薬品製造業界では必ずGMPを前提とした製造管理・品質管理の体制を構築します。
国民が安心して使用できる医薬品を製造するために、厚生労働省は「GMP省令」を定めて製造管理や品質管理の基準を明文化しています。
そのため、国内で医薬品の製造販売に関する承認を得ようとすれば、必ずGMP省令に従って環境を構築した上で、必要なデータを全てそろえて「GMP適合性調査」にクリアしなければなりません。
また、事業継続には5年ごとに行われる査察にパスして、常に適正な環境を維持していると証明することも必要です。
GMPは主として以下の3つの原則にもとづいて構成されています。
つまり、ヒューマンエラーの防止対策を講じた上で、品質汚染や品質低下を予防する環境づくりを徹底し、さらに合理的かつ効率的なシステム設計によって安全性や信頼性を担保するといったことが重要です。
人為的な誤り(ヒューマンエラー)とは、例えば使用する原料や調合の手順を間違えたり、人によって手順や方法が変わったりといった、人に起因するミスやエラーの総称です。
人間が作業に従事する以上、どうしてもヒューマンエラーのリスクがありますが、安全な医薬品を適正に製造するためには、必ずヒューマンエラーの対策を徹底してミスや間違いを予防する取り組みを行うことが肝要です。
また、誰が作業を担当しても同じ成果が得られるようにしなければなりません。
どれほどヒューマンエラー対策を行っていても、そもそも衛生管理が十分でなかったり、作業環境に問題があったりすれば、製造される医薬品の品質について信頼性を担保することはできません。
そのため、医薬品の汚染や劣化を防ぐために、環境そのものを根本から見直して適正化することが必要です。
空調管理や温度管理、光による影響など、医薬品の品質に関与する項目は多岐にわたっており、全てにおいて安全性を保つことが重要です。
作業環境や設備環境を整えても、より確実性を追求していくためにはシステム面での取り組みも欠かすことができません。
製造工程や品質管理などをトータルで監視して調整できるシステムを設計し、適切に導入することも大切です。
また、導入したシステムはそこで完了とするのでなく、定期的なアップデートやアップグレードによって常に適正な状態を維持することもポイントです。
当然ながら脆弱性が発見された場合、速やかに対処するようにしましょう。
GMPは基本的な原則が国際的に共有されていることに加えて、各国において法令や省令によってそれぞれGMP基準が定められていることも特徴です。
例えばアメリカの場合、連邦規則としてGMPが規定されており、医薬品だけでなく食品なども含めて総合的に管理対象とされています。
一方、日本では医薬品の製造に関してGMP省令が定められているものの、一般的な食品に関しては法的な既定は成されていません。ただし、今後対象が拡大される可能性はあるでしょう。
日本国内において、法的に定められているGMPとは医薬品の製造に関連したものであり、「医薬品GMP」と呼ばれることもあります。
ただし、日本では同時に「化粧品GMP」と呼ばれるルールが存在することもポイントです。
化粧品GMPとは文字通り、化粧品や医薬部外品などを対象とした品質管理基準であり、日本化粧品工業連合会の自主基準(プライベート認証)として定められています。
なお、自主基準であり法的拘束力はないものの、国際規格ISO22716認証にもとづいて定められており、製造過程や品質管理を考慮する上で基準の1つとされています。
サリドマイドとは1957年に西ドイツで開発された鎮痛剤・睡眠薬です。元々は副作用の少ない医薬品として考えられており、西ドイツだけでなく日本も含めた世界各国で普及していました。
しかし、その後の1961年、妊婦がサリドマイドを服用すると胎児の先天異常リスクや死亡リスクが高まることが発見され、日本国内でも多数の被害者を出すなど国際的な薬害事件として認知されました。
サリドマイド事件をきっかけとして、改めて医薬品の使用には有効性だけでなく安全性についてもしっかりと確かめることが重要であると認知され、翌1962年にはアメリカのFDAが医薬品製造や品質管理などの基準として「薬品の製造規範に関する事項」を制定しました。
これが現在も国際的に重視されている医薬品GMPのスタートとされています。その後は世界保健機関(WHO)が改めて「WHO-GMP」を制定し、加盟国を中心としてGMPの概念が広がりました。
医薬品業界や医療業界では、時代が変わるにつれて研究が進み、それまで常識とされていた基準や安全管理への考え方が実は誤りであったと発覚することも少なくありません。
そのため、GMPは初期の内容がいつまでも維持されているわけでなく、時代ごとに見直され、常に最新の安全基準や品質管理基準といったものが検討されていることもポイントです。
例えば日本では1976年から医薬品製造・品質管理に関する基準が行政指導として広がり、1980年には改めて「医薬品GMP」が厚生省令として施行され、さらに1994年の薬事法改正で医薬品製造の許可要件にもなっています。
また、2005年には医薬品の製造販売に関しても承認要件になるなど医薬品GMPの範囲は拡大されており、2021年にはGMP省令そのものが改正されてデータインテグリティに関する要件も盛り込まれました。
GMP(医薬品GMP)は医薬品製造業界において絶対的に遵守しなければならない国際的な要件であり、現行法によっても定められている法的基準です。
また、GMPは定期的に公的検査を受けて水準を満たしていると認められなければならない上、時代の変化やニーズに合わせて改正が繰り返されており、常に最新の状態に合致していることを示さなければならないこともポイントです。
2021年の改正ではデータインテグリティ要件も追加されており、正しい対応を実施していくようにしてください。