このページでは医薬品製造現場におけるプラグ&プロデュースの実現や、データインテグリティを確保させるためのポイントなどについて解説しています。医薬品製造の生産性や品質の向上を適正に目指せるよう詳細を把握しておきましょう。
プラグ&プロデュースとは、様々な業界の製造現場において上位システムと生産設備を接続し、合理的な製造環境を構築するための取り組みです。
医薬品業界だけでなく、種々の業界において品質管理システムや生産管理システムなどの導入とシステム化が進められていますが、実際は各種マネジメントシステムを導入しているものの、既存の生産設備と上位システムがデジタル的に接続されていないといったケースが少なくありません。
せっかくマネジメントシステムを導入しても生産設備の運用が職人による手作業によって管理されていれば、システムによる合理化を実現することは困難です。
そのため、プラグ&プロデュースを実践して設備とシステムの一元管理を目指します。
生産設備と上位システムを一元管理することで、本当の意味で製造現場のオートメーション化やシステム化を実現し、生産性を向上させたり品質管理体制を強化したりすることが可能です。また属人性を廃してヒューマンエラーも回避します。
プラグ&プロデュースを実践すれば全ての工程を管理システムや検査システムによってチェックできるようになり、現状の工程や全体の進捗について明確に把握することが可能です。また、生産状況を数字やグラフによって可視化しやすくなり、全体のマネジメントを担当する従業員が理解しやすくなるだけでなく、例えばクライアントへ進捗を説明したりプレゼンテーションを行ったりする際にも説明を簡単に行えるようになります。
生産設備で行われている作業のデータをダイレクトにマネジメントシステムへ記録させることが可能となり、従業員や担当者が個別に入力作業を行う手間が不要になります。
また、様々な生産ラインの管理データや各種製品の品質データについても一元管理できるため、任意のターゲットを比較検討しやすくなることも見逃せません。これにより現状の問題点を見つけやすくなり、さらに発展したプランニングなどを検証していくことも可能となります。
製造現場における現状把握を行いやすくなることで、リアルタイムの生産管理や品質管理を追求しやすくなるだけでなく、各種データ分析や評価試験についても合理的に進めやすくなることがメリットです。
データインテグリティでは客観的かつ合理的で正確な情報の記録や懸賞が重視されており、データ分析や品質評価などをスムーズに進められるようになれば作業工程への信頼性も高まります。
そのため、データインテグリティの実践を検討している企業にとってはプラグ&プロデュースの実現が重要になるといえるでしょう。
プラグ&プロデュースを最も端的に説明するとすれば、上位システムと生産設備をネットワークで接続することになります。
ネットワークでの接続には社内ネットワークを構築して、産業用イーサネットにより統合基幹業務システム(ERP)や製造実行システム(MES)、監視制御ソフトウェア(SCADA)といった各種システムと生産設備を連結します。
なお、産業用イーサネットを構成する通信手段にも複数の種類があり、どのような通信スタイルを選ぶべきか全体的なメリット・デメリットを踏まえてプランニングすることが重要です。
統合基幹業務システム(ERP:Enterprise Resources Planning)とは、文字通り全ての基幹業務を統合して作業工程や製造現場の一元管理を実現するために活用するシステムです。
会計システムや生産システム、販売システムといった基幹システムを統合して全体的なマネジメントを行いやすくするシステムであり、マネジメントシステムとして最上位に当たるシステムといえるでしょう。そのため、プラグ&プロデュースを導入する際には極めて重要になります。
製造実行システム(MES:Manufacturing Execution System)は、任意の分野における製造工程の管理や作業員に対する指示といった各種作業をまとめて管理するためのシステムです。作業工程を把握して状況確認を進めることは当然として、作業スケジュールを管理したり作業の問題点をピックアップしたりしつつ、さらに実績の分析やレポート管理といった業務もカバーします。
プラグ&プロデュースでは統合基幹業務システムと生産設備を連結する上位システムとして機能します。
監視制御ソフトウェア(SCADA:Supervisory Control And Data Acquisition)は、上位システムと生産設備のネットワークに関してチェック機構として作動するシステムです。統合基幹業務システムと製造実行システムが連結されていても、相互にやりとりされるデータに信頼性が欠けていればデータインテグリティを確保することはできません。
監視制御ソフトウェアによって生産設備から送られてくるデータをチェックし、内容について問題がないか常時監視をオートメーション化することで担当者のチェック作業負担を軽減します。
生産設備制御装置(PLC:Programmable Logic Controller)は生産設備そのものを制御するためのシステムです。原則として生産設備制御装置はそれぞれの生産設備ごとに設置されており、各種設備機器の制御を適正化しています。
製造現場の規模が大きくなるほど生産設備の種類や数が増えていき、正常な動作に必要となる情報量も膨大になります。そこで生産設備制御装置を導入して監視制御ソフトウェアで適切にチェックすることで、生産工程をスムーズかつ適正に維持することが可能です。
上位システムが人体における脳であり、生産設備が各種臓器であるとすれば、産業用イーサネットは全身を走る神経系と言えるでしょう。
ただし、人間の神経系と異なる点は、産業用イーサネットには複数の通信手段や通信方式が存在しているということです。産業用イーサネットは上位システムで使用されているイーサネットを、製造工程の下位である生産設備にも対応させる通信システムです。
そのため、産業用イーサネットの導入は必ず生産設備とのマッチングを行わなければなりません。
プラグ&プロデュースは製造現場の品質マネジメントや作業マネジメントを合理化して、情報の信頼性や客観性を担保する上で重要になるコンセプトであり、具体的なプランです。しかし本当の意味でデータインテグリティを確保しようとすれば、単に上位システムと生産設備をネットワークで結ぶだけでなく、各工程における情報の信頼性についてきちんと管理されていなければなりません。
プラグ&プロデュースにおける情報の信頼性を担保するためには適正な監視制御ソフトウェア(SCADA)の導入と運用が不可欠であり、データインテグリティの実現に向けたプランとしてSCADA技術を応用したソフトウェアプラットフォームの構築が検討されます。