近年、FDAのワーニングレターの指摘の多くがデータインテグリティの不備に関するものです。データインテグリティに関する不備に地域的な偏りはなく、多くの企業でデータインテグリティの改善や再発防止が要求されています。ここではデータインテグリティの当局の要求や不適合事例について考えていきます。
FDAはワーニングレターで、GMP省令に関する不適合を指摘します。データインテグリティに関する主な指摘事例としては、以下のようなものがあります。
日本ではGMP適合調査と指導をPMDA(医薬品医療機器総合機構)の品質管理部が行います。
頻繁に再解析をしていたが、手順書を整備せず再解析前のデータを残していなかった。再解析後のクロマトグラフのみが試験記録に添付されていた。
品質管理の職員全員がパソコンにアクセス可能で、データを削除可能な権限を持っていた。権限がある責任者を決め、パスワード管理することが必要です。
標準溶液や試料溶液の調製作業の記録がなかった。生記録を残すことは重要です。
事務室の段ボールに廃棄予定として、無効化もされていない未使用の試験指図記録や試験結果の一次メモ等が入っていた。
製造記録の施錠補完や持ち出し記録が整備されていなかった。GMP記録を外部業者が保管しており、外部業者を利用する手順がなかった。文書の紛失を予防に係る作業は手順書に盛り込むことが必要です。
不完全なデータを試験記録に含めていたことを指摘されています。非公式の結果を得るためのサンプルを最終結果として報告していなかったことがありました。また、品質と製造に関する記録が大量にゴミ箱から見つかり、生データの保存をしていなかったことが分かりました。試験記録に不完全なデータが存在していたため、データインテグリティに問題があります。
FDAの査察やPMDAの実地調査でデータインテグリティの指摘事例は多くあります。必要な作業を手順書に盛り込んでいない場合や非公式な試験の記録を残していない事例など、文書と記録が管理できていないことが多いといえます。
データインテグリティのガイダンスなどを参考にして、自社の文書と記録の保管の脆弱性を評価することが必要です。そして、脆弱な箇所を手順書に盛り込み、作業者に定着させることでデータインテグリティを脅かす要素を減らすことができるでしょう。当サイトでは、データインテグリティ対応を実現するための適切な手段として、システム導入による電子化・自動化のポイントを特集しています。ぜひご覧ください。