FDAは、データインテグリティのWarning Letter(ワーニングレター)による指摘が多発したため、2016年にデータインテグリティガイダンスを発表しました。このデータインテグリティガイダンスの発表で、医薬品製造業者はデータインテグリティの対応へより一層注意を払うようになりました。ここでは、FDA審査指摘の傾向について考えていきます。
データインテグリティに関するFDAのWarning Letterは、近年増加傾向にあります。Warning Letterで指摘される事項にはどのようなものがあるでしょうか? FDAの審査項目について以下に説明しています。
データインテグリティは、文書と記録の正確性と完全性が求められます。そのため、作業手順を変更するときは手順書を変更することが必要です。変更の管理をしないで作業を変更するとFDAの査察の指摘事項になってしまいます。
不適合品が発生したとき、その都度記録を取っていないと実際の数量が分からないことがあります。記録の完全性が要求されるデータインテグリティでは、こうした記録の不備に関する指摘も多いです。
パソコンの記録にアクセスするパスワードを品質管理の従業員全員が知っていたならば、誰でも記録を改ざんできる恐れがあります。文書と記録の管理権限の責任者を定め、その責任者にパスワードを管理させることが必要です。
データを管理するパソコンから監査証跡が消去されていた場合や監査証跡の機能がない場合は、FDAの指摘事項になってしまいます。データの完全性が要求されるデータインテグリティではパソコンの監査証跡に注意することが重要です。
非公式の試験でも、結果を記録として残しておくことが必要です。データインテグリティにはデータの完全性が要求されるからです。
FDAのデータインテグリティガイダンスが発表され、医薬品製造業者のデータインテグリティの重要度は増しました。
FDAのデータインテグリティのWarning Letterの指摘事項には一定の傾向がみられるため、医薬品製造業者はデータインテグリティガイダンスを理解し、指摘事項の例を自社に当てはめて捉えることが必要です。規制当局の査察の有無にかかわらず、指摘事項を参考にチェックリストを作成し、自社のデータインテグリティを強化することが大切といえるでしょう。